13. 「ワークショップ」の利用

13.2. ワークショップ利用マニュアル

概要

Moodleの「ワークショップ」モジュールは、ピア・レビューにより、アクティブ・ラーニングの推進をサポートする機能です。「課題」モジュールと同様に学生が課題に対するワークを実施して成果物のファイルまたはオンラインテキストを提出し、それに加えて学生が相互にそのレビューと評価(アセスメント)をすることができます。

学生は指定した個数の提出物について複数クライテリアの評価フォームを用いて評価します。学生間の評価のゆれがなるべく小さくなるように、学生には、提出前または評価前に、教師が用意した練習用の提出物によって評価の練習をすることを必須とすることができます。

デフォルトでは自分の提出物の評価者が誰であるかは非表示(匿名)ですが、コースまたは活動ごとに学生のパーミッションを設定して表示するようにできます。また、評価者に対して誰の提出物かを非表示にすることもできます。

ワークショップの評点は、提出に対する評点と他の提出物への評価に対する評点の二つに分けて算出され、それぞれ評定表に記載されます。

活動の進行

学生はワークショップ活動において、ワークの提出と、提出物の評価という二つの作業を順に実施します。さらに教師は学生に与える評点を確定させる作業を実施します。これらの各期間をフェーズと呼びます。

  1. セットアップフェーズ
    教師がワークショップモジュールの動作を設定します。課題と提出方法の指示、クライテリアの説明などを含む評価方法の指示、評価結果を入力するための評価フォームの設定などを行います。
  2. 提出フェーズ
    学生からの課題提出物の提出を受け付けます。次のフェーズに移る前に各提出物に対する評価者を割り当てておきます。
  3. 評価フェーズ
    学生は割り当てられた提出物のレビューと評価を実施します。
  4. 成績評価フェーズ
    教師が学生による評価内容を確認し、各学生の評点を決定します。
  5. 終了
    評定表に評点が反映されます。

フェーズは原則的に教師が手動で遷移させます。提出終了日時を設定している場合は、例外的に評価フェーズへの自動遷移を設定できます。標準的な順序を無視して任意にフェーズを変更することも可能です。

ワークショップ活動を開くと、教師・学生ともに、ワークショッププランナーと呼ばれるフェーズ進行表が表示され、現在どのフェーズにあるか、何が完了したか、次に何の作業をする必要があるか、などが明示されます。フェーズが進んだときに、ワークショッププランナーに赤いバツ印が表示されている場合は、現在のフェーズまでに必須または推奨される作業が未完であることを表していますので、よく確認してください。ワークショッププランナー以外の部分はフェーズごとに表示される情報が変わります。

ワークショッププランナーのスクリーンショット
[ワークショッププランナー]

活動の新規作成

他の活動等を追加するときと同様に、コースを編集モードにし、「活動またはリソースを追加する」により追加するモジュールのメニューから、「ワークショップ」を選択してください。入力が必須なのはワークショップ名だけです。必要に応じて新規作成時または作成後の「設定」タブで以下の項目も設定してください。

  • 説明: 活動の概要説明を記載します。セットアップフェーズ中に学生が活動を開いたときに表示されるほか、コースページに表示することも可能です。
  • 評定方法: 4種類の評定方法の一つを選択します。それぞれについては評価フォームの項を参照してください。
  • 提出に対する評点評価に対する評点: それぞれの満点を設定します。デフォルトは80、20です。
  • 提出設定:提出のインストラクション」で課題内容や提出に関する具体的な指示を記載し、提出タイプや、ファイルの場合の条件を指定します。提出物をなしにする設定はできませんので、オフラインでの活動について相互評価を実施したい場合は、ダミーの提出物を提出するように指示してください。
  • 評価設定: 「評価のインストラクション」で評価に関する具体的な指示を記載します。自身の提出物への自己評価をするかどうかも設定できます。
  • 全体フィードバック: 評価者が各クライテリアではなく提出物全体に対するフィードバックを記入可能になります。ファイルを添付することもできます。
  • 結論: ワークショップ終了後に学生全員に提示するテキストです。評価の根拠や発展的な課題に関するリソースを記載できます。
  • 提出例: 評価の練習用の提出物を用意するかと、どの時点で練習できるようにするかを設定します。セットアップフェーズで評価フォームを用意したあと、任意の件数の提出例を登録することができます。
  • 利用: 提出期間と評価期間が決まっている場合は設定します。これらが設定されている場合、提出フェーズでかつ提出期間内でのみ学生は提出でき、評価フェーズでかつ評価期間内でのみ学生は評価ができます。提出終了日時を有効にした場合は、終了と同時に評価フェーズに移行するようにも設定できますが、この場合は評価者をスケジュール割り当てするようにしておくとよいでしょう。

セットアップフェーズ

ワークショップ活動を新規に作成すると、セットアップフェーズとなります。このフェーズでは以下の作業を完了させます。

  • ワークショップ説明の記述(設定ページで記入して保存)
  • 提出のインストラクションの記述(設定ページで記入して保存)
  • 評価フォームの定義(以下で説明)
  • (使用する場合は)提出例の準備(以下で説明)
評価フォームの定義

評価フォームは、学生がこれに基づいて評価作業をするので、必須のセットアップ項目です。評価は単純に総合的な点数を入力するというものではなく、ワークに(通常は)複数の評価軸(評定方法ごとに、アスペクト、主張(アサーション)、クライテリアと呼称が変わる)を設けて、それぞれに関する評価(点数・コメント等)を入力します。このため、各評価軸の具体的な定義をしておかなければ、学生は評価作業ができません。

評価フォームは、ワークショップ活動内の「評価フォーム」タブ、またはワークショッププランナー内の「評価フォームを編集する」リンクより、編集ページを開いて定義します。設定項目は「評定方法」により異なります。

  • 累積評価: 各アスペクトに評点をつけ、加重を加味して合計評点を算出するという評定方法です。それぞれにコメントを記入することができます。
    アスペクトごとに、その説明、評価タイプ(通常は数値を選ぶ「評点」とします)、満点、加重を設定します。加重は評価者には示されません。
    評点は、アスペクトごとの得点率を加重平均し、「提出に対する評点」の満点を乗じて算出されます。
  • コメント: 各アスペクトに数値での点数をつけず、コメントだけを記入するという評定方法です。
    アスペクトごとに、その説明のみを設定します。
  • エラー数: 各主張(アサーション)に関する成否だけを判定します。累積評価の点数範囲を1と0に限定した場合と同等です。それぞれにコメントを記入することができます。
    主張ごとに、その説明、エラー(未達成)を表す言葉、成功(達成)を表す言葉、加重を設定します。デフォルトではエラーの加重合計に比例して評点が下がります。すべての主張と加重を入力して一度保存した後に評定マッピングテーブルでエラー数と評点の対応づけを変更できます。
  • ルーブリック: 各クライテリアに複数の到達レベルと点数の組を定義し、評価者はそれぞれの到達レベルを判定します。各クライテリアにはコメント記入はありません。
    クライテリアごとに、その説明、到達レベルごとの定義・評点を設定します。加重の設定はありませんが、クライテリアごとの最高評点により調整できます。
    ルーブリック定義画面のスクリーンショット
    [評価フォームの編集(ルーブリック)]

いずれの評定方法でも、評価時に提出物に対する全体的なフィードバックを記入することができます。

定義が完成したら、「保存してプレビューする」により、学生に表示される評価フォームの様子を確認できます。「保存して閉じる」により活動ページに戻ります。

提出例の準備

提出例を使用する設定にしている場合、評価フォームの定義が終わると、活動ページに「提出例を追加する」のボタンが表示されるので、これをクリックして必要な件数を追加してください。フェーズが進むとボタンが表示されなくなるので、あとで追加が必要になった場合は一時的にセットアップフェーズに戻す必要があります。

提出例の追加ページでは、学生が提出するときと同様の提出フォームが表示されます。ここに提出物であるオンラインテキストまたはファイルを指定し、「変更を保存する」をクリックします。次に評価を入力する必要があるので、「続ける」をクリックします。

評価例の入力ページでは、学生が評価するときと同様の評価フォームが表示されます。これに手本となる評価やコメント等を入力し、「保存して閉じる」により活動ページに戻ります。

提出フェーズ

提出フェーズに遷移するには、ワークショッププランナー内の提出フェーズ欄にある「提出フェーズにスイッチする」または、セットアップフェーズ欄にある「次のフェーズにスキップする」をクリックします。

学生は、「あなたの送信準備を開始する」ボタンにより提出ページを開くことができます。「提出のインストラクション」は両方に表示されます。提出期間を設定している場合は、提出ページで学生が実際に提出できるのはその期間内だけです。

学生による提出フェーズ画面
[提出フェーズ(学生)]

学生による提出画面
[提出フォーム(学生)]

教師は、ワークショップページの下部にあるワークショップ提出レポートにより、各学生の提出の有無と提出物を確認できます。

ワークショップ提出レポートのスクリーンショット
[ワークショップ提出レポート(提出フェーズ)]

提出フェーズでは以下の作業を完了させます。

  • 評価のインストラクションの記述(設定ページで記入して保存)
  • 提出の割り当て(以下で説明)
提出の割り当て

ワークショップ活動内の「提出の割り当て」タブ、またはワークショッププランナー内の「提出を割り当てる」リンクより、提出の割り当てページを開いて設定します。

提出の割り当て方法には、手動割り当て、ランダム割り当て、スケジュール割り当てがあります。これらは排他的なものではなく、一部を手動で割り当ててから残りをランダムに割り当てたり、スケジュール割り当てが実行されたあと評価期間開始前に手動割り当てで微調整するなど、相互に補完的に使用することもできます。

提出物がある場合しか評価対象になりませんので、手動割り当てまたはランダム割り当てですべての割り当てを行う場合は提出期間の終了後(または全員の提出の完了後)かつ評価期間の開始前に作業してください。

手動割り当て

提出の割り当てページを開くと、デフォルトで手動割り当てページとなり、各参加者に対する現在の評価者・評価対象者の一覧が表示されます。各参加者の評価者を追加するには、各参加者の左側でユーザを選択してください。評価対象者を追加するには、右側でユーザを選択してください。削除するにはそれぞれ削除アイコン(ゴミ箱)をクリックしてください。評価者と評価対象者の一方を追加・削除すれば他方にも自動的に反映されます。

ワークショップ提出の手動割り当て画面
[提出の割り当て(手動割り当て)]

ランダム割り当て

指定した基準に従って、ランダムに提出の割り当てを行います。

レビュー数」により1件あたり何人の評価者を割り当てるか、または1人あたり何件の評価をするかを指定します。

評価設定で「学生は自分自身のワークを評価することができます。」を有効にしてて、ここで「自己評価を追加する」を有効にした場合は、「レビュー数」の設定に加えて自身が評価対象者に追加されます。

オプションの設定後、「変更を保存する」をクリックすることにより自動的に割り当てが実行されます。割り当て結果を見るには、「手動割り当て」を選択するか「提出の割り当て」タブを開きなおしてください。

ワークショップ提出のランダム割り当て設定画面
[提出の割り当て(ランダム割り当て)]

ワークショップ提出のランダム割り当て結果
[提出の割り当て(ランダム割り当ての結果)]

評価者数あるいは評価対象者数の一方は「レビュー数」で固定されますが、特に参加者数が少ない場合、他方は必ずしも均等にならないことがあります。均等にする必要がある場合は、「現在の割り当てを解除する」を有効にして再度割り当てを行ってみてください。評価者が不足する場合は教師が評価に参加することも可能です。

ワークショップのグループモード設定が「分離グループ」の場合、同一グループ内のメンバーのみが評価者・評価対象者になります。ペアや少人数グループ内のみでの相互評価に利用できます。

ワークショップのグループモード設定が「可視グループ」の場合、「同一グループ内の他のメンバによるレビューを抑制する」により、他グループのメンバーのみが評価者・評価対象者になります。グループ内のメンバーによる評価にバイアスが含まれる可能性がある場合に利用できます。

スケジュール割り当て

設定ページで「提出終了日時後、次のフェーズに移行する」を有効にし、すぐに評価期間に入る場合は、スケジュール割り当てを利用することをお勧めします。また、提出終了日時が設定されている場合のみ、「スケジュール割り当てを有効にする」により有効にして利用できます。

提出終了日時が到来すると、「割り当て設定」内の設定に従って上述と同じランダム割り当てが実行されます。

一度スケジュール割り当てが実行されると、成功として記録され、提出終了日時を変更するなどしても再実行されません。何らかの理由で再実行したい場合は、「リセット」にチェックして保存しなおすか、ランダム割り当てを利用してください。

評価フェーズ

手動で評価フェーズに遷移するには、ワークショッププランナー内の評価フェーズ欄にある「評価フェーズにスイッチする」または、提出フェーズ欄にある「次のフェーズにスキップする」をクリックします。

評価フェーズでは、教師がすべき作業は特にありません。評価期間が開始したら、評価フォームや評定方法の変更は行わないでください。

学生には、評価のインストラクションと割り当てられた学生のリストが表示されます。

学生による評価フェーズ画面
[評価フェーズ(学生)]

評価」ボタンをクリックすると、評価ページに学生の提出物、評価のインストラクション、および評価期間内であれば評価フォームが表示されます。一例として、評定方法がルーブリックの場合の評価フォームは、各クライテリアのレベルごとのラジオボタン(リストタイプとグリッドタイプが選択可)と、末尾に全体フィードバックの入力エリアとなります。

学生による評価フォーム画面
[評価ページ(学生)]

ワークショップページの下部にあるワークショップ評定レポートにより、各学生の提出物に誰から何点の評点が与えられたか、各学生が誰の提出物に何点の評点を与えたかが確認できます。不適切な評点の扱いや、評価加重の変更については、次の項で説明します。

評定フェーズでのワークショップ評定レポート
[ワークショップ評定レポート(評価フェーズ)]

成績評価フェーズ

成績評価フェーズに遷移するには、ワークショッププランナー内の成績評価フェーズ欄にある「成績評価フェーズにスイッチする」または、評価フェーズ欄にある「次のフェーズにスキップする」をクリックします。

各学生の評点を計算するには、「評定を再計算する」ボタンをクリックしてください。ワークショップ評定レポートに、計算結果である「提出に対する評点」と「評価に対する評点」が表示されます。個別の評価者による評点は S (A) あるいは S (A) @ W という形式で表示されます。Sはその評価者がつけた評点、Aはその評価者の評価に対する評点、Wは評価加重でデフォルトは1です。この評点のリンクをクリックすると評価の詳細が表示されます。

成績評価フェーズでのワークショップ評定レポート
[ワークショップ評定レポート(成績評価フェーズ)]

提出に対する評点」は、各評価者によるSの加重平均です。「与えられた評点」欄でSのばらつきがある場合は不適切な評価がないかよく確認してください。ある場合は、その評点のリンクをクリックして評価ページを開き、「評価加重」Wを0にするか、それ以外の評価のWを増やした後、「評定を再計算する」ボタンにより再計算してください。

評価に対する評点」は、各評価に対するAの平均です。Aは、「成績評価方法」で選択されるアルゴリズムにより計算されます。教師はAの値をオーバーライドすることが可能です。提出物に対して不適切な評価が多数派となると、適切な評価をした評価者の評点が不当に下がる結果となります。Aが低いケースでは、その評価自体が不適切なのか他の複数の評価が不適切なのかよく確認してください。その上でWの設定やAのオーバーライドを適切に行ってください。

成績評価方法」として現在実装されている「最高評価比較」(Comparison with the best assessment)では、評価軸を多次元空間の次元とみなしてその提出物に対する平均評価を算出し、平均評価の最近傍の評価をベスト(最高)評価とした上で、そこからの距離が遠いほど評点が低下するように計算されます。この低下の割合は「評価の比較」により決まります。具体例を含む詳細は https://docs.moodle.org/401/en/Workshop_settings (Workshop settings - MoodleDocs) のGrade calculation methodの項を参照してください。

ほかに、必須ではありませんが、成績評価フェーズでは以下の作業を完了させておきます。

  • 活動の結論の記述(設定ページで記入して保存)

すべてのチェック・修正が完了したら成績評価フェーズでの作業は終了です。

終了

ワークショップ活動を終了するには、ワークショッププランナー内の終了欄にある「ワークショップを閉じる」または、成績評価フェーズ欄にある「次のフェーズにスキップする」をクリックします。

これにより、学生には、ワークショップページ内に「結論」で設定したテキストが表示されます。

参照

公式ドキュメント

*注意

ワークショップモジュールの日本語ユーザインタフェースには、不正確な翻訳が散見されます。随時改善を行いますが、曖昧なところは英語表示に切り替えて確認することをお勧めします。